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【アルバム名盤選】ルークトゥンHiFi・・・絶妙なセンスで蘇る古き良きルークトゥン

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ลูกทุ่งไฮไฟ (Hi-Fi Thai Country) 【พ.ศ.2552】

今のルークトゥンは1960~90年頃の全盛期に比べると、まったくの別物というほど変わってしまいました。

どの国のポピュラー音楽も時代によって様々な形に変化するのが常ですが、ルークトゥンに於いてはかつてタイ中部の歌手が中心だった頃と大きく様変わりしてしまい、モーラムをベースとしたイサーン勢に圧されっ放しです。

そんな現状に危惧したのか、古き良きルークトゥンを蘇らせようと計画されたのがこのアルバム「ルークトゥンHi-Fi」です。

2009年にリリースされたこのアルバム、タイトルのHi-Fiとは裏腹に、使用されている楽器はホーンセクションをはじめとした全てアコースティック楽器のみという、なんとも人を食ったコンセプト(多少のオーバーダビングやエフェクトは施されておりますが)。

リズム隊もベースとパーカッションが中心に構成されていて、まさに原初のルークトゥンを思わせるサウンドになっています。聴いていると1960年代の頃のルークトゥンをリアルタイムに聴いているような錯覚に陥ってしまいます。

回顧主義的ルークトゥンというのは他にも沢山有りますが、これほどまでに質の高いアルバムというのは、タイにもそうそうありません。

プロデューサーであるバン・スワンノーチン(บรรณ สุวรรณโณชิน)氏は、このアルバムがリリースされているインディー・レーベル「Baicha Song」のオーナーなんですが、元々はミュージシャンで、アルバムでもピアノ・パーカッションを担当している他、曲も全て彼の手によって作られています。何よりも、バン氏のユーモア感覚が全編に漂っているのが、このアルバムの大きな特徴と言えます。

収録曲は全12曲。タレントのマム・ジョクモック氏のナレーションから始まり、男女の歌手6名が各1~2曲担当するという構成で、最後にタイの伝統楽器クルイの独奏で締めくくるという、タイでは珍しいコンセプチュアルなアルバムになっています。

参加歌手は皆、素晴らしい歌を聞かせてくれていますが、中でも強い印象を残すのが、Tr.3とTr.10を担当しているオンスラーン・ウットヂャン(愛称:クック)です。

彼女はこのアルバムのレコーディング時は何と15歳でした。にも拘らず、情感豊かでピッチの正確な歌はまさに天才の一言。きっと将来はプロの歌手になるだろうと思っていましたが、残念ながらプロにはならず、現在はタイの空軍に所属していて、たまにアルバイト的に歌っているだけのようです。

しかし、今もその素晴らしい歌声は変わらず、何度か彼女の生歌を聴く機会がありましたが、本当に聞き惚れる歌を歌ってくれていました。

その他にもカラバオのパロディーが有ったり、蚊がテーマの曲では蚊の飛ぶSEが入っていたりと、お勉強臭くなく、最後まで楽しんで聴く事が出来ます。

リリースから時間が経っていますが、今も色褪せる事無い輝きを放っている傑作です。

ลูกทุ่งไฮไฟ 3D

ลูกทุ่งไฮไฟ 3D(Hi-Fi Thai Country Vol.2)【พ.ศ.2558】

なお、このアルバムには続編がありまして、2014年にリリースされました。タイトルは「ルークトゥンHi-Fi 3D(Hi-Fi Thai Country Vol.2)」。

2015年にリリースされたこの続編。Part2でしかも普通のCDなのに「3D」というネーミングがバン氏らしいセンスです。

コンセプトは前作と同じく、アコースティックで古き良きルークトゥン風サウンドを演奏するという事に変更はありませんが、参加歌手はタムラット・ゲーウマン(愛称:バード)とクックの二人に絞られています。

続編という事もあって若干テンションは低いものの、クオリティーの高さは変わりなく、素晴らしいアルバムになっています。Part1が気に入ったら、買っても損はありません。

正確に言うとバン氏はジャズ畑の人なので、言ってみればルークトゥン畑の「外側」の人なのですが、こういうアルバムが内側から出てくると、今イサーン勢に押されっぱなしの正統派ルークトゥンも復活の兆しがあるのではないか、とそんな予感もさせてくれる2枚の傑作です。

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