2018年も気が付けばもう8月に入りました。ついこの間新年を迎えたばかりのような気がしますが・・・、年を取ると時間が経つのが早いものです。
このブログの更新もすっかり滞ってしまっていましたが、決してタイ音楽の活動をサボっていた訳ではありません。
常にタイ音楽シーンのリサーチはしていますし、6月にはバンコク~イサーンを周って、毎日休みなくコンサートに行っていました。
しかし、タイの音楽シーンは移り変わりが早いので、更新しない間にすっかり状況も特に変わってしまいました。
特に最近のタイではスマートフォンの普及の影響もあって、ラジオやテレビなどの力が以前にも増して弱まり、メディアに頼らずリスナーが自ら良い音楽を選ぶという状況がすっかり定着しました。
6月にバンコク~イサーンを周った際に感じたのは、少し前まで社会現象ともいえるほどだったラムヤイ・ハイトーンカムの人気がひと段落し、ルークトゥンモーラムのシーンは次の段階に入ったという印象です。
そこで今回は2018年のイサーンを中心としたルークトゥンモーラムの音楽シーンを、タイで撮影してきた映像と共に振り返ってみたいと思います。
なお、順番は順位ではございません。また、ヒットチャートによる人気曲を選んだものではなく、コンサートで頻繁に歌われた曲やYouTubeでの再生回数が多い曲を選んだものですので、その点はご了承いただきたいと思います。
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ホーモック・フワック・パイ・ファーク・パー(ห่อหมกฮวกไปฝากป้า)
ラムヤイ人気を終わらせたのはまさにこの曲。オリジナル歌手はラムプルーン・ウォンサゴン(ลำเพลิน วงศกร)とテッ・トラグーントー(เต๊ะ ตระกูลตอ)。[オリジナルMVはこちら]
ラムプルーンはグラミー・ゴールドの歌手なので、久々に業界最大手が音楽シーンのど真ん中に戻って来た印象を受けますが、もうひとりの曲作りも担当しているテッはイサーンのインディー・プロダクション「Sing Music」の所属なので、Sing Music主導でグラミーは若干協力しているだけという感じで作られたのではないかと思います。
この曲は広まり方のスピードがものすごくて、YouTubeでの歌詞ヴァージョン動画も公開から4ヶ月かからずに再生回数1億回に達するなど、今のタイ音楽がインターネットを中心に動いているのを象徴しているかのようでした(ちなみにインリーやゴン・フアイライは1億回に達するまで1年、ラムヤイは半年かかっていました)。
しかし、最初この曲を聴いた時はなんだかフニャフニャしているばかりの印象しかありませんでしたが、呪文的な魔力のあるフレーズが頭から離れず、一時期はずっと頭の中でリピートしてしまうほどでした。
この曲の作者テッは独特の感性の持ち主のようで(しかも、まだ19歳!)、彼のソロ曲「シ・ングッ・ティ(สิงึดติ)」もユニークなセンスが光っている曲。この曲もコンサートでは頻繁に歌われています。
動画は6月7日にバンコクのイサーン・タワンデーンで撮影して来たものです。
ヂャーク・ヂャイ・フェーン・ガオ(จากใจแฟนเก่า)
この曲のオリジナル歌手カネーン・ナッヂャナン()も「ホー・モック・フワック・・・」を歌っていたテッ・トラグーントーと同じくSing Music所属の歌手です(なので、お互いのMVによく顔を出しあっている)。[オリジナルMVはこちら]
歌詞ヴァージョンMVは2018年8月現在で再生回数9,000万回。1億回に達するのも時間の問題ではないかと思います。
この曲に関してはとにかくメロディーが良いのがヒットの要因ではないでしょうか。
もちろんルークトゥンモーラムの定番である「彼に浮気された」系の歌詞に共感しているリスナーも多いでしょうが、歌詞が良くてもそもそものメロディーがダメならヒットはしませんから。
カネーンはこれといって際立ったキャラクターが感じられる歌手ではありませんが、コンサートを見た限りでは発声はしっかりしているという印象でした。
しかし、今後もコンサートのオファーが続くには、歌手としての何らかのアドバンテージが必要ですが、その辺はステージを1回見た限りでは感じられなかったのが残念な所。
動画は6月8日、BTSウターガート駅付近で行われたイベントで撮影したものです。
スープ・パン(สืบพันธุ์)
「ホー・モック・フワック・・・」の人気はまだ当面続くでしょうが、もう既に次にトップになる可能性のある曲が出てきています。それがこの「スープ・パン」という曲。[オリジナルMVはこちら]
オリジナル歌手のブック・スップガーン(บุ๊ค ศุภกาญจน์)という人に関しては、今の所まだ詳しい事は分かっていません。
しかも、動画で観る限りではあまり歌手らしいオーラも感じられなく、最初MVを見た時、歌っている人は誰なのか探してしまうほどでした。
ただ、好みもありますが、歌は1回聴いただけで強烈に印象に残って、「次に来るのはこの曲」と確信したほどです。
事実、コンサートで歌われれば大盛り上がりになっていましたし、通常イサーンで人気に火がついても、バンコクにそれが伝わるまで時間がかかるものなのですが、このブックに関しては既にバンコク近郊でのコンサートオファーが出てきていることから考えても、かなりの人気になっているのでしょう。
ちなみに、この曲のタイトルは「男女の営み」という意味。内容は実際にあった話が元になっているようです。
「望まない妊娠」が増え続けるタイへの警告的社会派ソングでもあります。
動画は6月17日コンケーンのバーンデーンノーイという村での出家式で撮影した、ロットヘーによるカヴァーです。
ラック・クワーイクワーイ(รักควายควาย)
この曲のオリジナルMVは2017年11月に公開されたものですが、2018年8月現在で1億9,000万回という大人気になっています。もちろんコンサートでも既に定番曲化していて、どのコンサートに行ってもだいたい聴く事が出来るほどです。[オリジナルMVはこちら]
タイトルは「愚かな愛」という感じでしょうか。
タイに関心のある人なら周知の事だと思いますが、「クワーイ(ควาย)」は本来の「水牛」という意味の他に、他人をバカにする意味もあります。また歌では「クワイ(ควย)」の比喩としても良く使われる言葉。しかし、外国人が使うのは絶対にやめてください。危険ですから。
歌っているミン・チャオグワイ(มิน เฉาก๊วย)という人に関しても全然情報がないのですが、デュエットしている女性歌手のミウ・マイキートファイ(มิ้ว ไม้ขีดไฟ)はイサーンでは人気のあるマイキートファイというグループのヴォーカリストです。
この曲でミウはものすごい高いキーで歌っているので、聴くとビックリする人も多いでしょう。沢山のコンサートでカヴァーされていても、ミウが歌っている高音部分をしっかりと再現できている人は今の所あった事がありません。
6月15日にラムイントラで撮影して来たこのラムヤイのカヴァーも、彼女は高音部分を歌ってませんから。
クワーイ・タム・イーピ(ควายตำอีปิ)
「プー・ニープ・イーピ(ปูหนีบอีปิ)」が大ヒットしたポン・ヂャンタポン(พร จันทพร)の第2弾シングル。今回はカニから水牛に変わっています。[オリジナルMVはこちら]
いかにも前曲の2番煎じ的タイトルですが、曲に関してはアップテンポになりロック色が増しているので、こちらの方がコンサート受けは断然良い。
最近は1曲ヒットしても次が続かないケースが多いですが、このポンに関しては戦略的にも上手くいったようで、見事2曲連続のヒットとなりました。
ただ、ポン自身のコンサートが増えているかというと微妙な所。今は「プーサオ・キーラオ」がヒットしたメー・ヂラーポンと一緒に各地を周っているようですが、やはり将来的にはひとりでステージに立てるようになってほしいですね。
動画は6月10日、マハーサーラカームのボーラブーで行われたロケット祭りコンサートで歌われた、ドゥアンチャーイ・ダーオユアのカヴァーヴァージョンです。
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ミアン(เมี่ยน)
今や流行歌からスタンダードになったのでは、と思わせるほど浸透したグン・スパーポン(กุ้ง สุภาพร)の大ヒット曲「シ・ヒ・ノーン・ボ(สิฮิน้องบ่)」。
あの曲は個人的に近年のタイ音楽が生み出した傑作中の傑作と思っているのですが、グンの場合は2番煎じ的手法はとらず、その後も何曲かオリジナル曲をリリースしてきました。
その内の1曲が2017年12月に公開されたこの「ミアン」という曲なのですが、彼女はスタッフに恵まれているのか、今回もまたタイ音楽としてはかなりクオリティーの高い曲になりました。[オリジナルMVはこちら]
イントロでスローテンポから入る曲構成は、ルークトゥンモーラムでよく使われる常套手段ですが、古いタイ歌謡風エフェクトを施しているミキシングはGood Jobと思わず膝を打ってしまいました。そこからベースが入り、イントロとは全く違う世界に変わっていく展開は見事の一言です。
パワフルなグンのヴォーカルと相まって、「シ・ヒ・ノーン・ボ」同様グンの代表曲になったと言えますし、個人的にもお気に入りの曲になりました。
動画は、こちらも迫力あるヴォーカルが気持ち良い、ヌット・ウィラーワンのカヴァーです。撮影は6月13日ブリラムのナーンローンにて。
サーラー・コンマオ(ศาลาคนเมา)
「現代モーラムのキーパーソン」と言える存在のペット・サハラット(เพชร สหรัตน์)。
日本ではタカテーン・チョンラダーの元旦那くらいの認識しかないかもしれませんが、今タイでコンサートを観に行けば、かなり高い確率で彼の作った歌を聴く機会があるほど、ペットの曲は多くの人に歌われています。
この「サーラー・コンマオ(酔いどれの東屋)」もそんなペットが作った、今コンサートでも大人気の1曲。[オリジナルMVはこちら]
オリジナル歌手はドークケー(ดอกแค)という歌手で、若手という感じではないのでそれなりのキャリアがある人かもしれませんが、広く知られるようになったのはこの曲から。
もともとペットが立ち上げたレーベル「スーラオ(เซอร์ลาว)」からリリースされた曲ですが、現在はトップラインが版権を持っています。
どことなく80年代も香りも漂う曲調が親しみを感じさせるこの曲。ペットの才能が光る1曲です。
ラムヤイもこの曲を気に入って歌っている歌手のひとり。ここ最近のコンサートでは必ず歌っています。
サーン・ワー(ซางว่า)
2013年にサーヤン・サンヤー追悼コンサートで初めて観たラムシン歌手が、デンチャイ・ウォンサーマート(เด่นชัย วงศ์สามารถ)と当時彼と組んでいたギック・ルンナパー(กิ๊ก รุ่งนภา)でした。
その後紆余曲折あって、現在はソロ歌手として活動している彼女ですが、なかなかブレイクせず、ファンとしてもヤキモキしていました。
そして、ようやく来たその時。2017年12月に公開された「サーン・ワー」がまもなく再生1億回に到達しそうな勢いです(2018年8月4日現在)。[オリジナルMVはこちら]
当然、コンサートでも沢山カヴァーされていますし、ギック自身のコンサートも以前と比べて格段に増えました。勢いに乗って、オリジナル曲をバンバンアップしているのも良い傾向です。
今後のギックの活躍も楽しみです。
動画は6月10日マハーサーラカームで行われたアーム・チュティマーのコンサートで歌われた、サーン・ワーのカヴァーです。
ペー・ノック(แพ้น็อค)
2016年に「ペンディンワイ・ナイヂャイ・アーイ(แผ่นดินไหวในใจอ้าย)」の大ヒットでその名を知られるようになったター・トーヂョーウォー(ต้าร์ ตจว.)ですが、彼はキャリアの長いミュージシャンです。
その分音楽的ボキャブラリーも豊富で、彼のコンサートは一級のエンターテインメントとして楽しめるクオリティーを持っています。
この曲「ペー・ノック(ノックアウト負け)」も1発のヒットでしぼむかと思っていた彼の起死回生の名曲。2018年8月現在のYouTube再生回数は7,400万回。
アレンジも含めてお気に入りの1曲です。
動画は6月17日にコンケーンのタワンデーンで行われたター・トーヂョーウォーのコンサートで撮影して来たものです。
コーン・レン(ของเล่น)
バンコクは言うまでもなくタイの首都なので、何でもありそうなイメージを持っている人がいるかもしれませんが、ことルークトゥンモーラムに関しては、バンコクで観る事が出来ない歌手は山ほどいます。
ドークムーイ・ペンナパー・ソムスック(ดอกเหมย เพ็ญนภา สมสุข)もそんな一人。2年ほど前に何回かバンコク近郊に来た事があるのですが、それ以降は無いんじゃないのかな。
かといって人気が無いのかと言えばそんな事はなく、彼女はイサーンでは正真正銘のスターなのです。
女優としての活動もしているドークムーイですが、オリジナル曲も沢山出していて、この曲「コーン・レン」もその中の1曲。[オリジナルMVはこちら]
アップテンポの「カー・クワーイ・ユ(คาควายยุ)」も人気曲になりましたが、このスローの曲でもドークムーイの魅力が存分に発揮されていて、人気のある曲です。
この曲がアップされているYouTubeのSala Recordのチャンネルでは、歌詞ヴァージョンのMVがダントツの再生回数になっています。
動画は6月12日にマハーサーラカームのボーラブーでのドークムーイのコンサートで撮影したものです。
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と、駆け足でこの半年を振り返ってみましたが、移り変わりの激しいタイの音楽シーンですので、半年後にはガラッとラインナップが変わっているかもしれません。そこが面白い所でもあるのですが。
保守的と思われているタイのリスナーですが、「ホー・モック・フワック・・・」のようにユニークな曲がヒットしたりする所から考えても、一概にそうとも言えません。
インディーの時代ですから、もしかしたら次は予測もつかない所から出て来た全然知らない歌手の曲がトップになるかもしれない可能性も充分にあります。
そう考えると、グラミーかR-Siamの歌手ばかりに独占されていた時代よりもはるかに面白くなっていると思いますね。
ルークトゥンモーラムを聴くなら、今が絶好のタイミングなのかもしれません。
8/12 キンケーウでアームとカネーンのコンサートに行って来ました。
アームは、喧嘩があり曲の途中で打ち切り終了したのが残念でした。
カネーンは、アーム以上に客席が沸いたように思いました。途中の喧嘩でも
中止にならず静まってから再開、会ったのは2回目でしたがコンサート終了後
少し話せました。コンサートの曲構成もよく、ヒットしている理由の一端が
わかったように思います。
貴重な情報ありがとうございます!旬の歌手をまとめて観る事が出来てラッキーでしたね。最近のバンコク近郊のコンサートではどうもケンカが多くなってきているようで心配です。以前はだいぶ落ち着いてきていて、お客のマナーも向上してきたのかなと思っていたのですが・・・。残念です。巻き込まれないよう充分注意してください。