気がつけば、2019年も残りわずかとなってしまいました。
まだモーラムツアーのリポートが途中になってしまっているのですが、もたもたしていると年が明けてしまいますので、リポートはいったんお休みして、2019年のルークトゥンモーラムで人気があった曲をおさらいしておきたいと思います。
個人的に2019年で一番印象に残ったのは、イサーン勢が主流の今のルークトゥンモーラムにおいて、久々にタイ南部からヒット曲が出た事です。
ただ、まだシーンを変えるほど力はなく、やはりほとんどがイサーンの歌手による曲なので、まだこの先当面はこの状況が続いていくでしょう。
このまとめは、YouTubeの再生回数やラジオ局のヒットチャートなど、インターネットで収集できる情報ではなく、実際タイでコンサートに行って、そこでよく耳にした曲の中から選びました。
また、主観は抜きにしていますので、年間ベストというものとも違います。
しかし、ここでピックアップした曲を聴いていただければ、今のルークトゥンモーラムのシーンがどのようになっているのかが、分かっていただけるのではないでしょうか。
今回は20曲を選びましたが、20個の動画を一気に貼ってしまうと、読み込むのに激重になってしまいますので、2回に分けて、10曲ずつご紹介いたします。
大雑把に上半期・下半期に分けて、Part1は1~6月の間にリリースされた曲の中から10曲をチョイスしています。
また、順番は順位ではございません。
タイの著作権について
リストを紹介する前に、簡単にタイの著作権について、触れておきたいと思います。
タイでヒット曲が出ると、一斉にいろんな歌手がカヴァーします。
日本人の中には「さぞや使用料で儲かっているんだろうな」と思う人もいるかもしれませんが、大抵のオリジナル歌手は、カヴァーされても使用料は取っていません(一部、大手レコード会社では使用料を取っている所もある)。
基本的にタイでは「ヒット曲がでる」→「カヴァーされる」→「オリジナル歌手の知名度が上がる」→「コンサートやイベントが増える」→「収入が増える」、という考え方になっています。
また、最近はYouTubeに曲をアップして、再生回数が増える事により、広告収入を得る歌手やプロダクションが増えています。
かつての買い取り制(歌手は1曲、あるいはアルバム1枚ごとにお金をもらって、その後、いくら曲が売れても歌手にはお金は入ってこない)の時よりも、環境はかなり良くなってきていると言えます。
印税制を導入すれば、もっと儲かるのに、と思う人もいるかもしれませんが、そうなると皆カヴァーしなくなりますし、それで曲も多くの人の耳にとどく割合がへりますし、結果、歌手にもリターンが少なくなる、という悪循環になってしまう可能性は高いです(実際、そうなっている所もある)。

ラムヤイ・ハイトーンカムが所属するハイトーンカム・レコードのオーナー、プラヂャックチャイさんのFacebookでのラムヤイの新曲についての投稿。 ここでは「ラムヤイの曲「ヂャイ・シ・ペー」のカヴァーは自由です。使用料はいただきません。」という趣旨の事が書かれている。
どういう方法がベストかという答えは難しいですが、少なくとも今の方法がタイには合っていると言えるでしょう。
前置きが長くなってしまいましたので、ここら辺でヒット曲まとめに入りたいと思います。
小さい子供たちも腰を振った、2019年一番耳にした曲
งัดถั่งงัด(ンガッ・タン・ンガッ)- เต้ย อธิบดินทร์(トゥーイ・アティップディン)
2017年に「コーン・ハーン(ของฮ่าง)」というヒットを出したトゥーイでしたが、この曲はその硬派なイメージとは正反対に、ユーモラスかつエッチな曲で、前曲よりもはるかにヒットしました。
リリースは2019年1月。
コンサートではお客がサビの部分で腰を振るのがお決まりで、若者だけでなく、子供たちまで腰を振っていたりしたほどです。
今年、この曲を歌っていなかったコンサートは無かったのでは?と思ってしまうほど、どのコンサートに行っても、よく耳にしました。
しかも、リリースされてから1年近く経つのに、年末の今でもコンサートでは必ずと言って良いほど歌われていて、息の長いヒットになりました。
モーラムの伝統スタイルをポップにアレンジして大人気になった曲
เต้ยลาหน้าเฟส(トゥーイ・ラー・ナーフェース) – กุ้ง สภาพร สายรักษ์(グン・スパーポン・サーイラック)
トゥーイ(เต้ย)とはモーラムのスタイルの一つで、踊りを誘発するような曲を表す際に使われることが多い。
モーラム・コンサートでも頻繁に使われ、この曲のタイトルになっているトゥーイ・ラーというのは、最後に出演者全員でステージに上がり、順番にメドレーで歌っていく時のパートの事を指します。
この曲ではそのモーラムのスタイルを上手くポップにアレンジして大人気になりました。
こういう曲は、例えば未だに人気の高い「メーハーン・マハーサネー(แม่ฮ้างมหาเสน่ห์)」のように昔からよくあるのですが、この曲ではサビを入れていて、我々外国人にも親しみやすくなっているのが特徴です。
リリースは2018年12月。
モーラム・コンサートでもトゥーイ・ラーのパートで歌われることが多く、多分これからも定番レパートリーとして、長く歌われていくのではないかと思います。
オリジナルを歌っているグン・スパーポンは「シ・ヒ・ノーン・ボ(สิฮิน้องบ่)」以降、コンスタントにヒット曲を出していますが、歌手としての知名度がいまいち上がらないのが残念なところ。
この曲の動画は2月にルーイで観たシアンイサーンのコンサートから、ナムターン・ワラーポンが歌うカヴァーでご覧ください。
オリジナルはこちら→เต้ยลาหน้าเฟส – กุ้ง สุภาพร สายรักษ์ [OFFICIAL MV] 4K
流行語をヒップホップ調の曲に上手く取り入れたキラーチューン
ก็มาดิคะ(ゴ・マーディ・カッ) – ยุ่งยิ่ง กนกนันทน์(ユンイン・ガノックナン) feat. Night Tingle
ユンイン・ガノックナンは大ヒットした「チャン・ヤン・ラック・トァー(ฉันยังรักเธอ)」でトゥーイ・アピワットと共演していた歌手。
もちろんそれ以前からソロ歌手で活動していましたが、世間的に知名度が上がったのはトゥーイと共演してからでしょう。
その曲では透明感のある美しい歌声を披露していたユンインですが、この曲ではイメージをガラッと変え、ちょい悪な感じで、しかもラップ調の歌を披露していて、良い意味で期待を裏切った曲になりました。
しかも、「ゴ・マー・ディ・クラップ(来るなら来い!)」という流行語をアレンジして取り入れた事で、かなり速いペースでファンの間に浸透していきました。
MVが公開されたのは2019年4月でしたが、その1ヶ月ほど前にデモの様な形のアコースティック・ヴァージョンが公開されていました。その時から既に高い注目を集めていたので、ヒットするだろうな、とは思っていましたが。
◆ก็มาดิค่ะ(ゴ・マー・ディ・カッ)Guide Version
ラップ・イサーン(แร็พอีสาน)に代表されるように、イサーンでもヒップホップは徐々に浸透してきていますが、その影響が如実に現れた1曲と言えるでしょう。
ヒット曲連発のレーベルが放つ男の哀愁漂う佳曲
รถบ่มีน้ำมัน(ロット・ボ・ミー・ナムマン) – จ๊อบ เสกสันต์(ヂョープ・セークサン)
この曲をリリースしているギター・レコードは、アレンジャーとして数多くルークトゥンモーラムのヒット曲を手掛けているテーク・コンサーン(เธค คอนสาร)が立ち上げたレーベルです。
オーイ・セーンシン(ออย แสงศิลป์)を発掘したのをきっかけに、昨年は「バック・テンモー(บักแตงโม)」の爆発的ヒットを生み出しました。
まだ立ち上げて2年ほどしか経っていないにも関わらず、これだけのヒットを生み出したテーク先生の手腕には、改めて驚かされます。
このヂョープ・セークサンの曲も安定に1憶再生を突破。
男の哀愁漂うメロディーと歌が印象的ですが、たくさんの女性歌手もカヴァーしていて、2019年のコンサートでは定番レパートリーとして人気を博しました。
ちなみにタイトルは「ガス欠の車」という意味。
ロットヘー・ブームの先駆けとなった大ヒット曲
คารถแห่..แววับ(カー・ロットヘー) – หงสา ประภาพร(ホンサー・プラパーポン)
今や「ロットヘー」とタイトルが付く曲は数多く存在しますが、もしかしたらロットヘーをテーマにした曲を歌ったのは、これが一番早かったのではないでしょうか。
この曲の最初のオーディオ・ヴァージョンが公開されたのは2018年9月でした。
ちょうど僕が初めてイサーンでロットヘーを観た頃と時期的に重なるのですが、その頃はまだ世間一般ではそれほどロットヘーが注目されていなかったはずです(イサーンでは以前からあった)。
◆僕がブリラムでロットヘーを初体験したのが2018年6月でした。
そのすぐ後くらいにバンコクでもやり始めるようになって、偶然にもブームと重なった事をよく覚えています。
そういった意味でも、この曲がロットヘーブームの火付け役になったかどうかは定かではありませんが、先見の明があったと言えるでしょう。
毎度の事ながら、サワット・サーラカーム先生のアレンジには自然と体が動かされてしまいますし、イサーンの人たちがどれだけロットヘーを好きかがわかる歌詞やMVは、何度聴いても楽しめます。
切ない歌とメロディーが胸を打つ名曲
อยู่บ่ได้(ユー・ボ・ダイ) – เต้ย อภิวัฒน์(トゥーイ・アピワット)
ユンイン・ガノックナンの所でも触れましたヒット曲「チャン・ヤン・ラック・トァー」で、彼女と一緒に歌っていたのが、このトゥーイ・アピワットです。
彼は皆から「クルー・トゥーイ(トゥーイ先生)」と呼ばれていますが、これは単なるニックネームではなく、本当に教員の資格を持っていて、教壇にも立っています。
さらに、作詞・作曲もできる音楽的才能を持ち、おまけにハンサムとくれば、女の子は放っておくはずありません。
6月に彼のステージを観たブリラムでも、トゥーイが登場するなり黄色い声援が止まない状態でした。
そういう事を差し置いても、この曲は名曲。
単純なバラードというだけでなく、夢と現実が行き来する手の込んだMVを見ごたえがあります。
◆オフィシャルMVはこちら→อยู่บ่ได้ – เต้ย อภิวัฒน์ [ Official MV ]
ちなみに、この曲でケーンを担当しているのは、日本にも何度も来たことがあるオンケーン・キアウことポンサポン・ウパニです。
動画は2019年6月のブリラムでのライブをご覧ください。
大人気ライブバンドの最大のヒット曲
ปี้(จน)ป่น(ピー・ヂョン・ポン) – เอ มหาหิงค์(エー・マハーヒン)feat. บัว กมลทิพย์(ブア・ガモンティップ)
ライブを中心に活動しているので、日本で知っている人は少ないかもしれませんが、マハーヒンというバンドはタイでは絶大な人気を誇っています。
そんな彼らが、女性歌手ブア・ガモンティップを迎えて制作したのがこの曲。
これまでリリースされたマハーヒンのオリジナル曲の中でも、最大のヒットとなりました。
イサーンのバンドであるマハーヒンと中部タイ(チャチュンサオ)出身のブアの組み合わせというのは、ちょっと不思議な感じがありますが、これはコンサートで何度か共演した事があって、実現したようです。
ただし、ブアの歌うパートがやけに低いキーの事から推測すると、元々はマハーヒン単独で作られた曲に、無理やりブアを押し込んだようにも考えられます(通常、男女のデュエット曲だと、それぞれが歌いやすいキーに合わせているはずなので)。
そういう意味では、若干違和感を感じるコラボでもありますが、その点を差し引いても、曲自体はさすがマハーヒンと言える出来です。
オフィシャルのMVも制作されていますが、ライブ動画の方がはるかに素晴らしいので、そちらを貼っておきます。
衰えないラムヤイ人気を確実なものにしたダンスチューン
เด๋อเดี่ยงด่าง(ドゥー・ディアン・ダーン)- ลำไย ไหทองคำ(ラムヤイ・ハイトーンカム)
ルークトゥンモーラムでは、ヒット曲が出ても大体1曲で終わってしまい、その人気が長続きすることは少ない(しかし、1曲当たれば一生食っていけると言われるほど、1曲のヒット曲で食いつないでいく事ができる世界でもある)。
「プーサオ・カーロッ(ผู้สาวขาเลาะ)」のヒットから既に3年が経つので、ラムヤイの人気はとっくに落ちていてもおかしくないのですが、未だに彼女のコンサートは常に満員で、テレビやCMの出演もひっきりなしにあります。
そして、持続してヒット曲を出すことが難しくなってきている今のルークトゥンモーラムの世界で、コンスタントにヒットを出し続けていることも、彼女の実力もあるでしょうが、運が良かったと、売れる前から応援している身としてはホッとしています。
3月にリリースされたこの曲は、モーラムのコンサートでも大人気で、ほとんどの楽団でレパトリーに組み込まれていました。
特にサーオノーイ・ペットバーンペーンのポン・ピラディーはこの曲が相当気に入っていたようで、1回のコンサート中に3回も歌っていたことが記憶に新しいです。
甘酸っぱい歌詞とキャッチーなメロディーもさることながら、キュートなラムヤイのダンスもヒットした要因だったのではないでしょうか。
◆オフィシャルMVはこちら→เด๋อเดี่ยงด่าง l ลำไย ไหทองคำ【OFFICIAL MV】
動画は12月1日に行われたルークトゥン・スクエアにラムヤイが出演した時に撮影した動画です。
新曲の「ヂャイ・シ・ペー(ใจสิเพ)」もあわせてどうぞ。
美しいメロディーと歌詞が世代を超えて共感を呼ぶ青春ソング
ชอบแบบนี้(チョープ・ベープ・ニー) – หนามเตย สะแบงบิน(ナームトゥーイ・サベーンビン)
ルークトゥンモーラムを聴いていていつも思うのは、日本の音楽にもかつてあった良いメロディーや活力がまだ残っているという事。
そんな事を感じさせてくれるのがこの曲です。
「仕草が好き、瞳が好き、笑顔が好き、だからあなたが好き・・・」と歌われるストレートな歌詞は、日本の音楽が忘れてしまったピュアな音楽的衝動がまだタイの音楽には残っている事を裏付けているような気がします。
加えて、美しいメロディーはルークトゥンモーラムというジャンルを超えて、心に響くものがあるのではないでしょうか。
◆オフィシャルMVはこちら→ชอบแบบนี้ – หนามเตย สะแบงบิน [OFFICIAL MV]
動画は9月にローイエットで行われた洪水被害者を救済するコンサートに登場したナムトゥーイを撮影したものです。
南タイから現れた妹姉による2019年を代表する曲
เลิกคุยทั้งอำเภอเพื่อเธอคนเดียว(ルーク・クイ・タン・アムプー、プア・トァー・コンディアオ) – ลิลลี่ ได้หมดถ้าสดชื่น(リリー・ダイモットソットチューン) feat. เก้า เกริกพล(ガオ・グルークポン)
2019年を象徴する曲は何かと考えた時に、真っ先に思い浮かんだのがこの曲でした。
理由のひとつは最初にも書いたように、タイ南部の歌手の曲であったという事。
最初に聴いた時は、「よくある子供が歌っている曲か」と、冷ややかな気持ちだったのですが、気が付くとメロディーが頭から離れなくなっていました。
気になって曲の背景を調べてみると、作ったのがジェニー・ラチャノックという人だという事で、がぜん興味が湧いてきました。これがもうひとつの理由です。
この辺の事に関しては、以前の記事に詳しく書きましたので、そちらをご参照いただければと思います。
https://lookthungmolamfanclub.com/2019/07/06/jenny_rachanok/
面白かったのは、曲がヒットすると世間的に注目されるのは普通は歌手なのですが、この曲の場合は歌っているリリーよりも作ったジェニーの方だったという事です(ちなみにジェニーとリリーは姉妹)。
ジェニーは自身でも歌っているので何ら不思議はないのですが、姉妹とは言え、他人に提供した曲で注目を集めるというパターンは珍しい気がします。
今やすっかり全国区の人気になった二人は、タイ南部だけでなく、北部やイサーンでも引っ張りだこの状態です。
動画は6月にラムカムヘン大学第二校舎前(通称ラム2)のマーケットで行われたイベントに登場した二人を撮影したものです。
◆オフィシャルMVはこちら→เลิกคุยทั้งอำเภอเพื่อเธอคนเดียว – ลิลลี่ ได้หมดถ้าสดชื่น Feat.เก้า เกริกพล
と、ここまではまだまとめの半分ですが、そこそこのヴォリュームになってしまいました。
しかし、これだけではやはりルークトゥンモーラムのシーンをお伝えするには足りません。
もう10曲分の後半は出来る限り年内にアップできるようにしたいと思いますので、しばしお待ちいただければと思います。
コメント