タイレゲエのアルバムレビュー

このように、ルークトゥンモーラムと決して無縁ではないタイのレゲエ。

この音楽をもっと知りたいと思い、タイで何枚かタイレゲエのCDを買ってきてみました。

まとめて聴くと、この音楽の全体像がぼんやりと見えてきたような気がします。

それでは、それぞれのアルバムに触れていきたいと思いますが、まずは1枚目は、タイレゲエのオリジネーターと言えるJob 2 Doです(ローマ字を読むと「ジョブ」と発音したくなってしまいますが、タイ語的には「ヂョップ」の方が良いです)。

彼はキャリアも長く、アルバムが何枚も出ていますので、どれを買えばよいか迷いましたが、ジャケ写がいかにもJobの人柄を表しているようだったので、2009年にリリースされた「By Lord(บายหลอด)」を選んでみました。

Job 2 Do「By Lord」(2009)

このアルバムを聴くと、彼こそまさしくタイレゲエのオリジネーターであることがよく分かります。

ジャマイカのレゲエをよく理解しつつ、リスペクトの精神も持ち、なおかつタイオリジナルのレゲエを作り出そうとしている姿勢が随所に感じられます。

ただ、かなり渋く、派手さはありません。ジャケ写からも想像できるかもしれませんが、彼の歌はいぶし銀という言葉がよく似合います。

そして、先に述べたように、歌詞も人生や社会情勢を歌った内容のものが多いです。

このアルバムに収録されている曲のタイトルも「サパーワッ・ローク・ローン(地球温暖化)」、「カヤッ(ゴミ)」、「チーウィット(命)」などが並び、それを見るだけでも、彼の歌の重みが伝わってくるのではないでしょうか。

Jobはレゲエで、単純に楽しんでもらうだけでなく、その先にあるものを伝えようとしている気がします。

タイのレゲエを聴いてみたいと思っている人は、まずこの人から、とおすすめしたいアーティストです。

◆Job 2 Do「サパーワッ・ローク・ローン(สภาวะโลกร้อน)」

2枚目のアルバムは、タイレゲエに大きな貢献をしたバンドであるT-Boneの、彼らの代表曲を集めたヒット曲集「ルアム・プレーン・ディーT-Bone(รวมเพลงดี ที-โบน)」です。

Warner Music在籍時に制作された3枚のアルバム(1992~1994年)から選ばれた全12曲が収録されています。

T-Boneヒット曲集「ルアム・プレーン・ディーT-Bone」

これを聴くと、彼らの音楽はプアチーウィット的な要素よりも、ポップス的な比重の方が強い感じがします。

収録曲はしっとり聴かせる曲から、ユーモラスなものやボサノバ風のものまで、レゲエをベースにしながらも、彼らの音楽がヴァラエティー豊かなものであることが分かる内容になっています。そういう意味では、非常に聴きやすいと言えるでしょう。

彼らはWarner Musicを離れ後は、Sonyに移籍したのですが、それ以降はさらに、より音楽的な深みが増していったようです。

今、昔のT-Boneのオリジナルアルバムを入手するのはほぼ不可能なので(中古で探せばあるかもしれませんが)、そういった意味では重宝するCDです。

◆T-Bone「ドゥイ・ドゥイ(ดุ่ยดุ่ย)」

もうひとつT-Bone関連で触れておきたいのが、Palmyの「The Acoustic Album」というアルバムです。

これはPalmyとT-Boneが共演したライブ「Flower Power Concert」の中から、Palmyの曲を抜粋し作られたアルバムなのですが、これが文句なしに素晴らしいのです。

Palmy meets T-Bone “The Acoustic Album”

Palmyの代表曲がスカやレゲエにアレンジされ演奏されているのですが、アコースティック楽器を中心とした編成によるサウンドは、彼女の歌により深みを与え、オリジナルとはまた違った新鮮な気持ちで聴くことが出来ます。

そして、なによりもT-Boneの演奏が素晴らしく、クオリティーが高いのです。

彼らのオリジナル曲がカットされてしまっているのは残念ですが、タイのレゲエに興味がある人は、一度は聴いてみる価値が充分にあります(DVDも発売されているので、そちらではT-Boneのオリジナル曲も聴くことが出来ます)。

◆Palmy meets T-Bone in Flower Power Concert Digest

4枚目のアルバムは、僕がタイレゲエに興味を持つキッカケを作ってくれたバンド、Kai-Jo Brothersのアルバム「レゲエ・パッション」です。

彼らはこれまで3枚のオリジナルアルバムをリリースしているのですが、この作品は2006年リリースされたセカンドにあたります。

Kai-Jo Brothers “Reggae Passion”

「ウェルカム・トゥー・スワンナプーム!」というセリフが入るTr.1「First Time to Thailand」から始まるこのアルバム。

若いながらもルーツレゲエをしっかりと勉強していると思われるしっかりした演奏に、タイのエッセンスを加味したオリジナリティーあふれる彼らの音楽は、世界に出しても引けを取らないクオリティーです。

ユーモアを感じさせつつ、カッコよく、躍動感にあふれるこのバンドの魅力が凝縮された名作といえるこのアルバム。

発売から時間が経っていますが、全然色あせることなく楽しめますし、タイレゲエの面白さを充分体験できる、今でも最高に好きな1枚です。

3rdアルバム「Born to be free」をリリースした後、メンバーの一人を事故で失ってしまった事もあって、活動休止状態だったKai-Jo Brothersですが、2019年に活動を再開したそうで、再び彼らの演奏を観る事が出来る機会があるかもしれません。

◆Kai-Jo Brothers – Reggae Passion

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